WEB講座

 WEB講座

 認知行動療法士となるために必要な次の講座について基礎部分を展開しております。
  認知行動療法講座
  精神医学講座
  脳神経科学講座
  マイクロカウンセリング講座

最新のWEB講座は,こちらからどうぞ。


最新頁:認知行動療法講座
第6回 1-2-2.査定(2)【2018/5/6】
【情報分析】
 認知行動療法のアセスメントでは,3つの観点から情報を整理しクライエントの理解を深める。
①多面的アセスメント
  ・・・・クライエントの症状を多面的に評価すること
②背景要因アセスメント
  ・・・・症状の維持・増悪に影響を与えているさまざまな背景要因を明らかにすること
③機能的アセスメント
  ・・・・諸要因の関連性・影響性を明らかにすること

●多面的アセスメント
 患者の訴える症状や問題は様々であるので,訴える症状を「問題症状」に置き換えて考えることが認知行動療法では重要である。そのため,訴える症状を,①情動的側面,②身体的側面,③行動的側面,④認知的側面に分けてアセスメントし,その症状がどのような場面で,どの程度生じているかを評価する。
【例】「人前で緊張してうまく話せない」と訴えるクライエント
・「情動的側面のアセスメント」
・・・・不安や緊張,落ち込みといった情緒的症状をどの程度感じているかを調べる。
・「身体的側面のアセスメント」
・・・・ドキドキや身体の硬直といった身体症状がどの程度生じているのかを調べる。
・「行動的側面のアセスメント」
・・・・「うまく話せない」ことや「人目を避ける」などの行動が,状況や相手の違いによってどのような差が出るのかを細かく調べる。これによって,漠然とした問題点が,どのような場所でどの程度生じているのかを明らかにしていく。
・「認知的側面のアセスメント」
・・・・「困難な場面でどんな考えがよく浮かぶか」「その場で必要な行動をとることがどの程度か可能か」「行動の結果をどのようにとらえているか」「今後の見通しをどのように考えているか」など,困難な状況でどのような考えが浮かんでいるかを把握する。通常,ホームワークとしてセルフモニタリングを行ない,実際の場面でどんな考え方が浮かぶのかを記録してもらう。面接では,その記録にもとづいて「各場面で共通して認められる考え方はどのようなものか」「行動や気分に強い影響を及ぼしている認知は何か」などを分析していく。

 多面的アセスメントは,各側面から評価することで患者の状態を包括的に理解することができる。一方で,患者が報告する症状の内容は主観的であること,患者が気づいていることだけが記録となるのであり,患者が気づいていないこと,見逃していることや,関係がないと思っていることは記録とならない。そこで,多面的アセスメントでは,患者からの報告以外に,心理検査や行動観察,家族などの関係する他者からの情報収集など,様々な情報源を得ることが重要である。

●背景要因のアセスメント
 クライエントが抱えている問題の維持・増悪には,さまざまな背景要因が関与している可能性がある。アセスメントの段階では,影響因の特定を急がず,幅広く背景要因を検討しておく。背景要因のアセスメントを行なう際は,次のようなの項目を実施する。すべての問題にすべての要因が関与する訳ではないが,各要因の影響性についてなんらかの形で査定しておく必要がある。
・発達的要因
  発達障害を背景とする問題行動やコミュニケーションの問題
  養育環境(虐待など)の影響による情緒的不安定さ
・身体的要因
  身体疾患に伴う不安,抑うつなどの情緒的問題
  薬物の副作用による気分の変調
・生活習慣や行動パターンに関する要因
  生活の乱れや偏りによる生活問題
  過剰な行動パターンによる心身の変調
  薬物使用やアルコール摂取状況など
・性格的要因
  過敏,神経質さ,完璧主義などといったストレス脆弱性となりうる性格傾向
・家族関係の要因
  問題の維持・増悪を促進している家族関係
  問題の改善を妨害している家族関係
・周囲の人間関係の要因
  ストレス源としての人間関係
  サポート源となりうる人間関係
・環境的要因
  問題の先行要因としての環境事象
  問題の強化因子としての環境事象

●機能的アセスメント
 これまでに得た患者の主訴にかかわる多面的アセスメントでの情報と,背景要因に関するアセスメントでの情報から,どのような関連性を持つのかを検討していく。ここから患者が抱える問題の形成・維持・増悪の過程を推論していくのが機能的アセスメントである。患者が,どのような状況で,どのような特徴から,どのような症状を経験し,どのような生活上の問題を抱えることになっているのかを分析する。こうした情報を整理・分析することで,患者の問題症状への理解を深めていくことができる。
 ここでのポイントは,必ず問題症状を具体的に取り上げながら整理していくことにある。事例として,上司に反抗的な態度を取る男子社員を考えてみる。まず反抗的態度をターゲット反応として明確にした上で,
①こうした態度がいつ生じているか,
②こうした態度のきっかけはどのような事象か,
③こうした態度の現われ方に,周囲の人間の反応や態度がどう影響しているか,
④こうした態度を取ることで,どのような結果を手にしているか,
という点から整理していく。これによって,患者に対する周囲の具体的な対応策を考えていくことができるようになる。

 こうした点を整理する前に,「生育環境が悪い」とか「未熟なところがある」といった環境や患者の全体的な特徴に漠然と注目してしまうと,詳細の検討がが行なわれていないために,具体的な対応策は考えにくくなってしまう。機能的アセスメントを実施する場合には,問題が生じるプロセスについて具体的な状況を取り扱いつつ,環境要因と個人要因の影響性を考えていくことが重要となる。

 機能的アセスメントでは,分析に続いて,患者の問題の形成・維持・増悪にかかわる仮説を検証していく。この仮説は,患者の理解や改善計画の基盤となるものであるが,固定的・絶対的なものではなく,毎回の面接でさらに情報収集し,仮説にもとづく治療の成果を評価しつつ修正・精緻化を行なう。このように,常に仮説をたて検証していく手続が認知行動療法における査定の基本であり,患者の状態を的確に把握できる唯一の方法と考えられる。

最新頁:精神医学講座
第6回 1-1-6.ここまでのまとめ【2018/5/6】
 ここまでの内容をまとめてみましょう。まず最初に,精神疾患における正常と異常の概念を検討しました。症状にしたがって異常を判断し,治療の必要ある場合に精神疾患と診断する。その際の基準になるのが操作的診断基準ということでした。

 次にテーマにしたのが,精神疾患の分類と言うことで,原因の面から,器質因(外因),内因,心因という分類ができること。こうした分類方法に従って診断する基準を伝統的診断基準と呼び,精神疾患の本質を把握しやすいことを話しました。これに対して,症状の面から客観的で正確な診断を目指して,Ⅰ軸からⅤ軸までの多軸診断を採用しているのが操作的診断基準でした。

 そして前回,インフォームド・コンセントとして,患者に正確に診断を説明し,納得した上で治療に自由意思で同意いただくことが大切であることを話しました。

 ここまでの流れから,操作的診断基準を基にすることも,多軸診断を採用することも,すべては正確な診断を確保するためと言えます。また,こうして下された正確な診断を,患者に納得いくように説明し,同意の上で治療するということが,インフォームド・コンセントにつながる訳です。

 こうした有り方は,カウンセリングにおいても必要なことです。昨今は,傾聴型のカウンセリングばかりでなく,問題解決型の心理療法や認知行動療法が採用されています。カウンセリングに治療的な側面が出てきている訳です。こうした作業を行う上では,やはりインフォームド・コンセントの概念が必要になります。「ただ何となくこの心理療法がいいのではないか」といった曖昧なことで心理療法を行なうことは,戒められなければなりません。心理療法の内容と効果を説明し,クライエントが納得した上で,療法に同意してから作業に入ることが必要です。精神医学の知識は,こうした意味からも大切な学習と言えます。

 次回から,精神医学における面接がどのように行われるかを見ていくことにしましょう。

最新頁:脳神経科学講座
第1回 1-1-1.脳の構造【2018/4/15】
【全体脳の構造】
 脳は,ニューロンと呼ばれる神経細胞が集まって,情報ネットワークを構築しているものです。「大脳」「小脳」「脳幹」「脊髄」といった部分から構成されています。重さ1400gの臓器で,重量比からすれば,身体全体の2%を占めるに過ぎません。その一方で,脳のエネルギー消費量は500kcal/日で,全身の筋肉の消費量とほぼ同僚を消費するのです。ちなみに,脳で消費されるエネルギーは,糖質=ブドウ糖のみとなっています。

 脳の構造の大部分を占めるのは,「大脳」であり,全脳量の85%を占めています。人間らしい機能としての思考や感情,感覚や記憶をつかさどっているのです。大脳の背側の下にあるのが「小脳」と呼ばれる部位です。全脳量の10%を占める部位で,全身の筋肉をコントロールし,姿勢やバランスを保っています。大脳の下には,「脳幹」と呼ばれる生命維持の機能をつかさどる部位があり,呼吸や血液・体温などを調整しているます。脳幹は,さらに細分化されて,視床や視床下部,下垂体などからなる「間脳」「中脳」「橋」最下部にあり脊髄につながる「延髄」などの部位から構成されています。

【大脳の構造】
 大脳は,大脳縦裂(だいのうじゅうれつ)と呼ばれる溝によって,右脳と左脳という半球に分かれています。それぞれの半球は,中心溝,外側溝,頭頂後頭溝といった溝によって,4つの葉に分けられています。

 「前頭葉」が最も大きく,大脳の33%を占めており,思考や感情,判断,推論,学習などの高度な知的活動の中枢となっています。また,中心溝付近にある運動野と呼ばれる運動をつかさどる部位も前頭葉の一部となっています。中心溝をはさんでこれに続くのが「頭頂葉」で,頭頂葉には,皮膚感覚などの感覚を扱う感覚野が存在し,空間認識や感覚をつかさどっています。外側溝を挟んで,耳側に降りてくると,そこには「側頭葉」と呼ばれる部位があり,ここには聴覚野が存在し,また,顔,形などの認識や記憶を担当しています。ここから背側に移動すると「後頭葉」となり,ここには視覚野があって,主として視覚に関する機能をつかさどっています。

 次回から,さらに詳しく脳の構造や機能を見ていくことにしましょう。

最新頁:マイクロカウンセリング講座
第5回 1-1-5.守秘義務の例外にまつわる話【2018/5/6】
 前回,クライエントに自傷他害の恐れがあるときは,守秘義務の例外となるとお話しました。それでは,カウンセリングの度に「自殺する,自殺する」と言っているけれど,そんな危険性がみじんも感じられないクライエントの場合はどうなるでしょうか? 文字通り自殺と言っているから,秘密を破って良いのか? はたまた単なる口癖と思って,守秘義務の通りにした方が良いのか? そんなことを考えている内に,突然自殺してしまうことはないのか? なかなか判断に迷うケースです。


 同じ事は,刑に服して刑期を終え出所された方にも言えます。たまたま,何かの縁でカウンセリングすることになった。捕まるときに裏切った仲間が憎くて殺したいという話を聴いてしまった。そんな時,どう考えますか? 単に苦しい胸の内を吐露しただけかもしれない。カウンセラーにだからこそ,そう言ったのかもしれない。でも,本当にやりかねないかもしれない。これもなかなか判断に迷います。

 ケースは全く違いますが,夫婦や恋人の間でエイズの感染を言い出せないときにも,別の意味で守秘義務の例外問題が発生します。当然2人の間に性的交渉があるとするなら,エイズの事実を知らない相手は,結果として感染してしまうことになります。その前にクライエントがカウンセラーの所に相談に来た時,カウンセラーは守秘義務との間で悩むことになります。エイズが治療すればすぐ治る病気であれば,守秘しても構わないのですが,現実にはそう簡単にはいかないようですから,死とのつながりを考えると見過ごす訳にも行きません。また,エイズにかかっているかどうか,かかっているかもしれないという不確定な相談になると,さらに微妙な問題になります。

 自傷他害の時のひとつの指針として,クライエントの言葉から推察して,本人や相手にどの程度の危険や危機が差し迫っているのか,どの程度緊急性があるのかということが判断材料になると思います。本人のセリフや態度から実現性は低いなと感じられたなら,基本的には守秘義務を守るべきと言えます。それにもかかわらず危険な結果が出てしまったときには,もうカウンセラーの責任と呼べる範疇の話ではないと言えるのではないかと思います。

 一方,エイズのケースですが,海外では,主としてアメリカですが,ある程度のルールがまとまってきています。クライエントのエイズ感染を知ったカウンセラーは,まずクライエントに対して相手に感染の事実を告げるように勧めます。それを無視するクライエントの場合には,カウンセラーから直接その事実を告げても構わないというルールです。この形を覚えておくと,いざというときに良いかもしれません。守秘義務やその例外と言っても,考え始めるといろいろなことがありますね。

 では,次回は,「話の口火を切る」というお話をすることにしましょう。